多分…、いや、確実に過去最高に難しい状態のレストアです。
 今回は走行30万kmというエボⅢの純正MOMOステアリングです。
 エアバッグが装備されていない年式なんですが、すでにメーカーでは新品パーツの供給はありません。
 オーナーさんの強いご希望もあり、今回レストアをさせて頂く事になりました。
状態は説明するよりも、現品を見てもらったほうが話が早いでしょう。
 革は全体的に傷んでいます。
 向かって右側はグリップテープの様なモノが巻かれていて、オーナーさんが大変だったのを垣間見ることができます。
 ただ、後々このテープがあって良かったと思うんですが…。


 テープが巻かれていない左側です。
 MOMOは革の合わせ目が接着のケースが多いんですが、このステアリングも接着でした。
 テープが無いことで革に接着されたウレタンが引っ張られ、見事にひび割れてしまっています。
 さらに、引っ張られて寸法的にも大きくなってしまっています。

 一番ひどいのは上部です。
 革は欠損して、さらにウレタンも削れて凹凸が酷いです。
 レストアを考えるのであれば、革がひび割れた位で使用を止めたほうが無難です。
 ベースが痛むと修復に時間も費用もかかってしまいますし、最終的な仕上がりにも影響してきます。

 この状態のステアリングを丁寧に剥がします。
 長年の使用でウレタン部分も削れてしまっています。

 痛みは裏表含め全体の80%くらいに及んでおり、下地作りでかなりの時間と手間が掛かっています。
 樹脂系の粘りのある補修材ですが、あまり厚くは盛れないのでギリギリまでです。

 さあ、それでは完成品公開~!

持ち込んでいただいた時点では、30万キロを使用した革はその限界をむかえていました。
 しかし、純正を使用したいというオーナーさんのご要望を受け、職人のプライドを掛けた挑戦が始まりました。
 この先も困ることが無い様、改善出来る部分は改善します。
 既存の分割では革の剥がれのリスクがあるので、基本的に手縫いのステッチで仕上げます。
 デザイン的にディンプルを配すために、上下左右の4分割に改めます。
もう、加工前とは全く違います。

 凸凹だった上面も丁寧に下地を作り、元の状態からは想像できないほどのフラットな仕上がりです。



 一緒にズルムケになった社外ノブもお預かりしましたので、こちらも同時に巻き直します。
 ノブもなかなかの痛み具合です。

 革はズルムケてしまい、ステッチもかなりズレています。
 ベースはアルミの無垢なので、見た目以上に重いです。

 ズルムケだったノブもちゃんと再生できました。

正直、最初に現品を見た時は「もうダメだろうな」と心によぎりました。
 しかし、なんとか再生したいという強い気持ちに押され、「これは挑戦しなければならない」と思いました。
 作業内容としてはとても大変でした。しかし、それ以上の満足感があった作業でした。
=加工費=
 費用は個々のパーツに合わせて行ないます。